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やついツーリスト in スリランカ ②「バワの洗礼」

やついツーリスト in スリランカ

第二弾「バワの洗礼」


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入国審査を終え、荷物を受け取りに、ターンテーブルへと急ぐ。

ここでようやく、旅の主役であるやついさんの姿が見えた。


「やついさーん!」


まるでお父さんを見つけたときのように、ほっと安堵する。

やついさんとは、やついさんとSundayカミデさんとの音楽ユニット「ライトガールズ」のアルバムに少しだけ参加させてもらって、時々ライブイベントに出演させてもらったりお世話になっていたので、私の気分的には友達なのだ。



おそらくぼっちな私を心配して、やついさんは気を利かせ、側にいた初参加の女子たちに

「この子はバチェラー2に出演していた倉田茉美さんのお姉さん」

と、紹介してくれる。

やついさんはamazon公認のバチェラーファンなので、ファンはその影響で、大概バチェラーを見ている。

(ライトガールズの件も、やついさんがバチェラー経由で姉妹に声をかけてくれたのである。)

なので、それだけで女子たちの表情から、私への不信感がとれるのがわかった。

ありがとう、茉美。

持つべきものはかわいい妹である。



しばらくすると、現地でガイドをしてくれる日本語ペラペラのスリランカ人「マーティン」がやってきた。

「わー!マーティン!」

去年の参加者から、かなり大きな歓声が上がる。(前年もやついツーリストの行き先はスリランカだったので、マーティンがガイドを務めていたのだ。)

初参加である私は、「そんなにうれしいものだろうか」という気持ちだったが、最終日には、この気持ちがわかるようになるから、旅とは不思議だ。

「マーティン、また会えてうれしい!」

再会すれば、きっと私もそう叫ぶだろう。



それから、やついさんの後輩である芸人さん、おくまんさんに挨拶をした。

私はついさっき、飛行機を降りるとき、知らない人にイメージだけで「おくまんさんですか?」と訊いてしまったことを話す。おくまんさんは若干引いていた。

自分でもなぜそんな一か八かの賭けに出たのかわからない。恥ずかしい人間だとつくづく思う。



シムを受け取る人が多かったため、空港での待ち時間が、わりと長かった。

しかしそのおかげで、そこそこ参加者さんとも挨拶や会話ができてきて、ようやくツアー感がでてきた。

はじめは、あまりにも濃いメンツに、馴染めるか絶望的な気がしていたけれど、喋ってみるとみんなやさしい。というより、結構みんなバチェラーや、ライトガールズのイベント等を見てくれていて、なんとなく私のことを知ってくれていた。ありがたいことだ。



そのあと、皆揃って集合写真。ようやく映ることができてほっとする。

私はカフェ女子ババアならぬ、猫狂いババアなので、お決まりにゃんポーズをする。

そして、このとき隣に映っていた、のちに「野犬」というあだ名となる男子が、「変なポーズしてる……」と、私を見ていたことを、私は知らなかった。


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空港をあとにして、バスに乗り込む。

今夜宿泊するジェフリー・バワ(インフィニティプールの発案者としても有名な天才建築家)が初期に手がけたホテル、ジェットウィングラグーンへ向かうのだ。


バスのなか、やついさんが旅のはじまりを盛り上げてくれる。


旅を通して思ったことだが、私がいちばんたのしかったのは、バスの中かもしれない。

涼しくて快適だったし、何しろ、やついさんのトークが本当に面白かった。

参加した30人、ひとりひとりに向けた、特別なラジオがかかっている感じだ。

眠るのも勿体なくて、ずっと聞いていた。

ずっと聞いていたかった。


もしやついツーリストに行こうか迷っている人がいたなら、別に誰とも仲良くなれなくても(そんなことは絶対にないと今なら断言できるが)、このバスのなかでやついさんのトークを訊いているだけでも行く価値があると、私は思う。



そして一時間半ほどしてホテルに到着。

現地時刻でもう9時。

雨は止んでいたが、暗くてほぼ何も見えない。

そのせいで、ここがスリランカなのかどうか、やはり実感がわかない。

ただ持ってきた一眼レフで写真を撮影すると、目の前にものすごく長いプールが映った。


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そしてそのプールを囲うように、客室が配置されている。

個人旅行なら、ホテルのことを隅々まで調べて予約するたちだが、今回は本当になにも調べてきていないので、その分期待もがっかりもない。

「わあ」と思うだけでいい。

こういう気楽な旅もたまにはありだなと思った。



「では部屋の鍵を渡しまーす」



ウエルカムドリンクを飲みながらほっこりしていると、ついに運命のときが訪れてしまった。

ここで相部屋となる人が発表される。

それは旅の運命を決める瞬間といってもいい。

たぶんこれは相性の問題だけれど、いい感じに気を使わないでいられる相手かどうかは、結構重要だ。

(まあ結果的にみんな、優しくていい人だったので、過剰に心配する必要はなかったし、なんなら私と相部屋になった人がいちばんかわいそうな気もする。)


だがわたしは、なんとなく感じていた。

前回のエピソードで書かなかったけれど、成田空港に着いたときに見かけた、一人でぽつんといたあの女の人、なんじゃないだろうかと。


「昭島さん(あだ名)、倉田さん(私)」


すると予感は当たった。


「私、あなたと一緒になると思ってたんです!」


うれしくて駆け寄り、思わずそう言った。この人だったら同じ部屋でも安心して眠れそうだと、少し感じていた。そういう直感はだいたいあたる。

一方昭島さんは、さぞかし妙な女と相部屋になったと不安になっただろう。


先に言うと、旅が終わるまでの一週間、昭島さんはずっと、女神のようにやさしかった。

そして口の悪く我儘な私とは対照的に、とても言葉使いの上品な、綺麗なお姉さんだった。


ああ、神様。なんて私は運がいいのだろう。

正直、運の良さだけでここまで生きてきた感がある。


そして部屋へ行き、自己紹介をし合うと、昭島さんはなんと、エレ片のラジオは習慣で訊いているが、特にエレキのファンというわけではないらしい。

なるほど、だからこんなに上品なのか。笑

というのは冗談だけれど、普通にスリランカに旅をしに来たのだという。

それでやついツーリストに申し込むとは、ものすごい度胸だ。

やついさんを友達と思っている私ですら、三週間くらい迷ったというのに……。

(今となれば、あのとき思い切ってよかったと思う。本当に。)



何はともあれ、念願のやさしくてきれいなお姉さんと同室になり、ほっと一安心だ。

いい旅になりそうだと感じながら、レストランでライオンビールを飲んで、部屋に戻り、お風呂に入った。


するとなんと、お風呂はなんていうかもう、ほぼ外にあった。

(トップ画像参照)


視界のなか、ヤモリが5匹いた。でかいゴキブリも一匹壁にはりついていた。

いつもの私なら、死んでもそんなデンジャラスなお風呂には入らない。

だがここが海外だからなのだろうか、折角来たのだからという貧乏根性からだろうか、意地でも入ろうと思った。

小さな虫を浴槽から洗い流し(なんとも気持ちの悪い作業だった)、NANAみたいなバスタブにお湯を張った。


ヤモリはこの際、もう気にしなくていいだろう。

あまり動かないし、オブジェだと思えばいい。顔だって案外かわいい。

だがGだけは無理だ。

あんな大きな物体が飛んできたら終わる。

こっちは無装備なのだ。

結局ずっとGを監視しながら、お風呂に入っていた。



これがバワの洗礼だろうか……。



浴槽に入って疲れをとるはずが、なんだか疲れてきた。


開放的なのはいいが、乙女としては、せめて虫が入らない設計にしてほしかった。と心のなかで、バワに文句を垂れる。私は文句垂れだ。

ただインスタ映えはばっちりだし、ここに泊まるのは今日だけなのだから、経験としては最高だ。それに部屋はとてもきれいで、アジアンな感じがかわいい。


もう上がって髪を洗おう。


Gを見つめ続けたせいだろうか、私ははやくも日本が恋しくなっていた。

星5のホテルなのに、シャワーの水圧も弱くて、なんだか悲しくなる。バワがデザインに全振りしたせいだろう。

(虫のせいで、バワへの文句が止まらない。)


ああ、イッテQのイモトさんは毎日こんな感じの生活なのだろうか。

すごいな、イモトさん……。

日本から持ってきた、ラックスのシャンプーで頭を洗いながら思った。



ああ、相部屋の人はとてもいい人で安心したけれど、それにしても6泊って、なんだか長いな。

日本から遠く離れ、家族もいない環境ではやくも少し、ホームシックになってくる。


せっかく締め切りが終わって時間ができたのだから、家でミシン(愛猫)とゆっくり「ゼルダの伝説」をしていたほうが、楽しかっただろうか。


ハイパーインドアな私は、この旅が最高の思い出になることも知らずに、まだそんな下らないことを考えていた。



③へ続く


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by 1000ve | 2019-04-05 15:52 | 旅の記憶(エッセイ)

小説家の木爾チレン(chiren kina)です。このブログでは、電車のなかや、カフェ、学校の休み時間にゆるく読んでいただけるような「掌編」を中心に、お仕事のお知らせ、日々の戯言など、ふんわりと掲載していけたらと思っています。


by 木爾チレン / chirenkina